正統派のDELAY BY WIN&SONS
米シティグループのM子会社のC・Mなどで、その貸し出しの劣化は連結べースで親銀行に響いた。
時間の経過と共に影響は銀行本体に及び、不良債権は拡大する。
住宅関連では、不良化はノンバンクが実施するサブプライムローンから、本体で手がけるプライムローンに広がった。
さらに、景気の悪化で商業用不動産関連融資や、カードローンなどの不良化も進んだ。
加えて証券化の機能低下が銀行融資を圧迫する。
銀行は、証券化を進めれば進めるほど自己資本にゆとりができて新たな投融資を拡大していった。
ところが証券化の機能が停止したことにより、証券化で資金を調達していた企業の銀行への融資要請が相次いだ。
このため米国の銀行による信用供与は、サブプライムローン問題が発覚したあともR・Bが破綻するまで増えつづけた。
証券化を使って自己資本への負担を軽くしたはずの融資が、銀行に戻ってバランスシートを圧迫した。
これによって、証券化が生んだ余力で実施していた新たな投融資はできなくなった。
しかも銀行の自己資本は自らのサブプライム関連の投融資で段損され、銀行は中小企業や財務体力の弱い企業を対象に貸し渋りを強化した。
証券化崩壊の影響で銀行が傷つき、間接金融の機能が大きく低下した。
大手金融機関を直撃するもうひとつの経路は、証券化商品の損失だ。
2007年目月になってサブプライムローン関連に投資していたスイスの大手金融機関U、C、Mなどが巨額損失を計上した。
損失を被ったのは銀行だけではなかった。
サブプライムローンで大きく価格が下がった商品のうちCDOを見ると、銀行の保有分が○%と最も多いものの、資産運用会社が○%、保険会社が四%、年金基金が○%、ヘッジファンドが○%をそれぞれ保有している。
ファンドなどへの影響は比較的早くから垣間見られた。
○○年5月初め、Uが、傘下のD・Cを解散した。
サブプライムローンやオルトA関連のCDOの価格が下がり、大幅損失を被ったためだった。
6月には米大手投資銀行B・S傘下のファンドがCDOの価格下落で損失を抱え、Bは○億ドルの支援に追い込まれた。
ヘッジファンドなどは、高いリスクの投資や新しいモデルに基づく投資で高い利益をねらっていたが、それが裏目に出た。
痛手を負ったヘッジファンドなどは、リスクの高い投融資を手控えた。
リスクテーカーがいなくなり、市場に猛烈な縮小圧力がかかった。
ABCPのほか、サブプライム以外の証券化商品、借り入れで規模を膨らませた買収(LBO)、ジヤンク債、新規株式公開(IPO)などの市場からもリスクテーカーが消え、取引が急縮小した。
米国のリスクの高い債券の発行額は、○○年の1360億ドルから○○年の445億ドルへと○○%も減った。
1990年代の金融革命が生み出した市場は、ことごとく縮小した。
影響は伝統的な市場にも及んだ。
○○年の市場を見ると、世界の株式関連の発行額は4706億ドルと○○年に比べ○○%も減った。
米国ではモーゲージ関連の発行が○%、社債の発行が○%も減った。
このように、銀行を介さないで市場から直接資金を調達する直接金融が、大打撃を受けたのである。
日本の不良債権問題では、銀行が最大の資金供給者でその供給ができなくなり、貸し渋りが発生した。
米国では市場は直接金融、間接金融、さらに新しい分野の証券化と多様化したが、それがことごとく機能不全に陥った。
こうした状況は、リスクテーカーの体力低下を通じた市場の連鎖崩壊で、米国の実体経済を急速に疲弊させた。
万全に見えた米経済が急失速したのはなぜか。
そこには米国経済の金融技術依存体質があった。
米国の経常赤字のファイナンスは、住宅公社の証券化に支えられていた。
州の財政は、モノラインと呼ばれる信用保証業者の支援による低利調達の恩恵を受けていた。
金融機関はクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれる新しい手法でリスクを回避し、それが金融拡大の原動力になっていた。
それらの金融技術が機能不全を起こしたことにより、米経済の足腰が急速に弱ったのである。
住宅バブルの崩壊は米国経済を揺さぶった。
とりわけ、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)と連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)の政府系住宅公社の危機が重くのしかかった。
2007年日月、フレディマックが719月期決算で○億ドルの赤字になったことを明らかにした。
住宅価格下落の影響が、住宅融資の証券化を手がけていた政府系金融機関に及び始めた。
米国は大恐慌の後、住宅融資を支援するためファニーメイを設立した。
その後、フアニーメイは民営化され、一部が政府抵当金庫(ジニーメイ)として政府部門にとどまった。
さらにその後、フレディマックが設けられた。
ファニーメイ、フレディマックが、政府監督を受けながら民間金融機関として運営される半官半民の機関として、米国の住宅金融を支えた。
ファニーメイ、フレディマックは、債券発行で資金を調達して、民間金融機関からプライムローンを買い入れた。
それと共に証券化業務にも乗り出す。
民間の住宅融資を買い集めてプールを作り、それを担保に小口の証券を作って、保証を付け、販売した。
両方の形態で発行された両公社の債券は、合計5兆ドルにものぼった。
公社は証券化の生みの親で、世界最大の証券化の担い手でもあった。
格付け会社は、政府系の住宅公社の債券には政府の暗黙の保証が付いていると考え、最も信用力の高いトリプルAを付けた。
両公社債は安全で、利回りは国債より高い、買い得のドル建て資産とみなされ、日本の外国為替資金特別会計など、世界中の公的機関や民間金融機関が購入した。
両公社は住宅バブルが膨らむ過程で、買い入れ対象をサブプライムローンやオルトAなどの質の低い住宅融資に広げた。
ところがバブルが破裂して、そうした融資が腐り始め、さらに住宅価格の下落が進むと、プライムローンでも延滞が増え収益を圧迫した。
こうして、政府系で過小資本だったこともあって、債務超過に陥った。
米政府は7月、公社に必要なら公的資金を投入する方針を決めると共に、FRBが資金繰り支援に乗り出した。
しかし動揺は収まらず同年9月に公社を公的管理下に置いた。
住宅公社の債券やその保証債を保有していた世界中の投資家は、その保有を見直した。
公社債は政府保証ではなく、債務不履行(デフォルト)のリスクがあることを再認識したのだ。
しかし米国は、公社を公的管理下に置いても公社債に政府保証を付けなかった。
両公社あわせて5兆ドルある債務を保証すると、政府の実質債務が急増し、米国債の格付けが落ちる可能性があるためだ。
中国やロシアなどは保有する公社債を売却し、外国人による公社債など政府機関債(エージエンシー債)の売買では売却が購入を上回る売り越しになった。
世界の中央銀行などによる両公社債の保有は減り始めた。
両公社債などの住宅融資を裏付けとしたモーゲージ市場は、米国債市場を上回る規模で、世界中から資金を吸い上げ米国の経常赤字をファイナンスする有力な手段だった。
その信用が揺らいだことは、米国の赤字ファイナンスができなくなる可能性を示唆し、基軸通貨であるドルの信用を揺さぶった。
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